Zirororororo

見たけりゃ見てください。

One of them

外での昼飯は、もっぱらチェーン店ですませる私だが、ついに飽きというものがきてしまい、いよいよ重い腰をあげ飲食街へと足を運んだ。家から15分という近場ではあったが、入ったことのない店がいくつも立ち並んでいて、いかにも飲食街といった感じだ。優柔不断な私は、2.30分ほど店の中の様子をのぞいたり、メニューを睨みつけたりしていた。独り身のサラリーマン、群れる主婦グループ、機械的に動くアルバイター……様々な人種が各々の気の向くまま過ごす昼下がりの光景が広がっていたが、いずれも従業員と客の関係を一様に呈していた。それらは各々が違った時間を生きていようが、それぞれが店のone of themであって、店の外から覗くだけの私は、文字通り部外者であった。覗きながら、私は自分がone of themになってしまうことを恐れた。絵画の一枚のように、アニメのワンシーンのように、店という入れ物に閉じ込められ、一様に均質化され、観測される……それはまるで自分が店の一部になってしまったかのような倒錯を起こし、私は私ではなくなる。お客さんA。それが周りから見た私であった。独りで黙々と食べるときはそんなことに気が散ってしまい、居心地が悪いせいかちっとも味がしない。だから私は一人で行く飲食店は好きじゃない。しかしそんなことすら気にならないぐらい、one of themであることに慣れることこが、大人になるということなのだろうか。私はまだまだ大人にはなれないということだろうか。そんなことを考えながら食べるカレーは、少しスパイスが強いように感じた。